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掲載日 2008年10月14日
国分寺 真姿の池湧水群 − 歴史薫る武蔵野の森と清らかな湧水。散歩のあとは蕎麦 山泉でちょっと一杯。
東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 国分寺 真姿の池湧水群
東京 国分寺 真姿の池湧水群 -
大学進学で上京し、初めて馴染んだ町、国分寺。多摩川の向こうの下宿には寝に帰るだけで、友と語らうのも、片思いの女にフラれるのも国分寺だった。
国分寺は今の私の生活の原風景と言っても良い町。就職のために学生マンションを引き払って国分寺にアパートを借り、大阪勤務から戻って再び居を構え、10年前に家を買うまで暮らした。
薄給ゆえ、今の家を選んだのだが、多少無理をしても国分寺に住むべきだったと考えることがある。
今でもテニスに行く途中、誰かと待ち合わせるとき、なんだかんだと月に何度も国分寺を訪ねるが、最後に町をゆっくり歩いたのはいつだっただろう。
昨日食べ損ねた蕎麦屋に行くついでに、昔よく歩いた武蔵野の森へ散歩に出掛けた。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 国分寺 真姿の池湧水群
東京 国分寺 真姿の池湧水群 -
国分寺駅の南側、国分寺崖線の坂道を降りてゆくと、池や泉から湧き出る流れを散見する。母校の裏手にも小さな泉があり、殿ヶ谷戸庭園の斜面にも池がある。聞くところでは、日立の敷地内にも立派な池があるらしい。
そのひとつ、「真姿の池湧水群」は市民に開放されている貴重な湧水地である。昔からの農家、古い祠、伝説の残る神社など、所謂「武蔵野の面影」を残す涼やかな森の小道。
多摩川の奥でさえ失いかけている清水は、近隣住民の献身で清らかに湧き続ける。ミニチュアの箱庭の中には、今日も武蔵野の緑が生きている。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 国分寺 真姿の池湧水群 農家の路上販売
東京 国分寺 真姿の池湧水群 農家の路上販売 -
流れのほとりに建つ、大きな納屋と立派な門を構えた農家。その向かい側は、平安の昔に美女が身を清めたと言われる弁財天。
この清水、弁財天の伝説がなければ、明治以前に農地として開墾されてしまっていただろう。またこの農家がなければ、戦後の宅地開発の波に飲まれて、住宅地の中に埋没してしまっていただろう。
いくつかの偶然や巡り会わせで、この森が私の前に広がっている。いや、純粋性が人の心に訴えかけて伝説を生み、侵すべからざる聖地となったに違いない。「清」が生き続ける偶然は必然である。
農家の路上販売に並べられているニンジン。青々として豊かな葉を茂らせ、実は赤子の頬よりも赤い。今の世までまで泉を守ってきたご褒美。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 国分寺 武蔵国分寺
東京 国分寺 武蔵国分寺 -
徳川時代、この辺りは鷹狩りの場所、お鷹場にだったことから、この小道は「お鷹の道」と呼ばれている。湧水の小川の流れに沿って延びるお鷹の道を歩いてゆくと、武蔵国分寺跡に突き当たる。
今は「最勝院国分寺」として、江戸時代の建物が残っている。武蔵国分寺は今から千年以上前、741年に建立されたと歴史の教科書が教えてくれた。千年、ものすごく長い時間だけれど、この近くにはもっと昔の竪穴式住居跡がある。
数人の画伯が、江戸時代に立てられた楼門の下で、本堂をスケッチしている。この風景は、今から千年後にはどうなっているのだろうと考える。この森と泉の箱庭に限っては、今も千年前もそれほど変わっていないのでは?とも思う。そして千年後にも清らかなままで残っていてほしい。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 国分寺 武蔵国分寺公園
東京 国分寺 武蔵国分寺公園 -
お鷹の道から雑木林の坂道を上ると、緑の芝の美しい公園が広がる。昔は鉄道関係の施設があったはずだけれど、大型のマンション開発と共に公園として整備された。
公園は国分寺と国立を結ぶ幹線道路を挟んでいるため、大きくて広い歩道橋で結ばれている。歩道橋の上からは、西国分寺駅周辺の高層マンション群を一望できる。
緑の中に聳える白いマンションは、都会のビル群とは違って人の息吹と言うか、生活の鼓動を感じる。環境上いろいろ問題があるけれど、私個人としてはこういう風景は好きだ。
本質を突き詰めると破壊なのかもしれない。でも真実として、生命活動は環境破壊そのものなのだから、せめて少しでも緑を残して美しい景観を作り出そうとする努力は、偽善でしかなかったとしても、やはり善である。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 西国分寺 蕎麦 山泉
東京 西国分寺 蕎麦 山泉 -
公園を越えた所が目指す蕎麦屋、開店10分前に到着。国分寺からでも、直行すれば15分程度だろう。
店の名は「山泉(さんせん)」。ネットでも有名で、何年か前にはテレビでも紹介され、蕎麦処の長野の人が訪ねてくる程だと聞く。
善政の元での泰平と豊穣を意味する「五風十雨」と掘り込まれた柱がシンボル。「五風十雨」に込められた思いがとても気になる。考えながら待っている間に暖簾が掛かった。
一番乗りで入店。店内には作家の故・山口瞳さん直筆の巨大ななまずの額縁が飾られている。ここには「玄妙腹白」と。この言葉は意味すら分からない。これらの意味を店主に聞けるぐらい、馴染みの客になれたらいいなぁ。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、西国分寺 山泉 自家製御新香と鎮国之山「誉富士」
西国分寺 山泉 自家製御新香と鎮国之山「誉富士」 -
まずは休日の旅のお約束、お楽しみの一杯を注文。酒は2種類。月替わりメニュー「鎮国之山 誉富士」と定番メニューの「岩代」。まずは「鎮国之山 誉富士」、肴には自家製のお新香を。
歯ざわりの残る薄味気味のお新香が皿に山盛り。これだけで二合三合はいけてしまうなぁ。ピピッと醤油を数滴かけて、誉富士と共に。いやはや、さっぱりすっきり、身体にしっくり来る飲みやすい酒だ。あとでわかったことだが、誉富士は静岡産の米を静岡の水で仕込んだ酒らしい。
そういえば多摩の水で仕込んだ澤乃井を飲んでから、日本酒が好きになった。人は地元のものを自然と受け入れるのだろう。静岡で生まれ、多摩で育った私には誉富士も澤乃井も、慣れた水でできた身体に合う酒なのだ。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、西国分寺 山泉 卵焼きと鶴乃江酒造 岩代の国
西国分寺 山泉 卵焼きと鶴乃江酒造 岩代の国 -
パリポリ、ちびちびやっているうちに、卵焼きができてきた。良い感じの焼き色。高級なオムレツの攪拌ムラ・焼きムラのない黄色一色より、程よく焦げ目が付いた卵焼きが好きだ。
焼きたてのアツアツを口に放り込む。口の中から蒸気が出てくるように熱い。これがうまい。大根おろしで舌を清めながら、酒を進める。そして卵焼きをもう一口。いいねぇ、こういうの。
控えめに飲んでいたつもりが、誉富士の片口が底をついた。もう一杯、今度は岩代を頼む。この岩代という酒、ネットでのヒットが少ない。会津の鶴乃江酒造が蔵元らしいが、銘柄の掲載がない。今度山泉を訪ねたときにボトルをよく見ておこう。
片口と箸を持ち替えながら、至福の一時を過ごす。でも本命は蕎麦だ。キリのよいところで、「粗挽」と「田舎」を一枚ずつ。蕎麦を待ちつつ、残りの酒を飲む。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、西国分寺 山泉 粗挽蕎麦
西国分寺 山泉 粗挽蕎麦 -
「粗挽」が出てきたのは、つまみが終わって、岩代が少々の頃合。ちょうど良い。
一本つまんでみる。蕎麦切りの歯ざわりがはっきりしている。噛み応えがあって、風味があって、食べた気がする蕎麦。しっかり噛まないと飲み込めない、通は喉で蕎麦食うらしいけれど、そんなのはもったいない。しっかりと味あわせて頂きました。
汁も程よい味加減。昨日の江戸の味とは違って、塩気よりもうまみが立っている。この味のほうが好みだ。それでもやはり普通のそば汁よりは塩辛いので、つける量は控えめに。
ネギも山葵もほとんど手をつけずにすすり込む。本当の蕎麦好きならば、汁なしで手繰るのだろう。ちょっと真似してみたいけれど、汁つきの蕎麦がよい。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、西国分寺 山泉 田舎蕎麦
西国分寺 山泉 田舎蕎麦 -
「粗挽」の余韻を楽しんでいるうちに、「田舎」が運ばれてきた。蕎麦色の蕎麦である。
同じく一本つまんで噛みしめる。噛むほどにうまみが広がる。香りというより、穀物のうまみとでも言った方がよいだろう。炊き立ての米とか、焼きたてのパン、小麦の全粒粉を練り上げた上質なうどんやパスタに通じるものがある。穀類を最良に仕立てたときに楽しめる、穀類独特の風味がある。
先ほどの「粗挽」は蕎麦の実の食感を、この「田舎」は蕎麦の実の恵み全てを食べているような思いだ。
でも、米や小麦に比べて、蕎麦の風味ははかない。米にしてもパンにしても、攻めてくる強さがあるのに、蕎麦はこれだけ強く作ってあっても、こちらが感じてあげなければ、風味が通り過ぎてしまう。茹で立てでしめる前の蕎麦なら、攻めてくる香りがあるのだろうか?
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、西国分寺 山泉 田舎蕎麦
西国分寺 山泉 田舎蕎麦 -
以前郡上八幡の蕎麦屋で店主にこんなことを言われた。「昔の蕎麦は十割じゃぁ臭くて食えたもんじゃなかったから、汁や薬味を工夫していたんだ。今の蕎麦は臭くないから、そのままでも食える」
どんなものでも食べて美味しければそれでよいのだが、「通好みの味」と言うやつになると、一定のルールがある。
美味い蕎麦を食いたくて蕎麦屋に足を運ぶけれど、正直なところ私はまだ蕎麦の味が分かっていない。だから、蕎麦通の言う「うまさ」と私の感じている「美味さ」には違いがあると思う。
それでも、私は山泉の蕎麦を美味いと感じた。
だから、いつかは蕎麦だけで・・・と思うけれど、こういう店に来たら、ついつい壁に張り出してあるつまみが気になり、うまそうなグラスに心を奪われるのだろう。
国分寺 真姿の池湧水群 、東京都国分寺市東元町〜西元町 / 武蔵国分寺跡、真姿の池湧水群、東京 国分寺 お鷹の道
東京 国分寺 お鷹の道 -
また今日も心地よい酩酊感で店を出る。
まっすぐに駅に向けばよいところを、もう一度坂道を下ってお鷹の道を歩く。
とても心地よい初秋の森を、いろいろな思い出に迷い込みながら、駅へ向かった。
帰り道、気がつくと手には日本酒のハーフボトルが。国分寺の酒、真姿の池湧水で仕込んだ「武蔵国分寺」。思わぬ散歩の土産ができた。
山泉(地図):国分寺市西元町2-17-16
鎮国之山誉富士:富士高砂酒造(株)