Sweet Heaven Photograph & Words.
 小笠原が歴史に登場するよりはるか昔、南洋から小舟でやってきた人々が、平地に小さな村を作って暮らしていた。
 島には木の実が実り、海にはたくさんの魚がいて、人々はつつましくも穏やかに暮らしていた。

 しかしある日、島に大きな船がやってきて、武器を持った人が島の平地の村を横取りしてしまった。
 もともと島に暮していた人たちは、仕方なく山の向こうの小さな浜辺に移り住んだ。
 その土地は水に乏しく、また風が強くて木の実が実らない場所だった。

 暮らしは日に日に苦しくなってきたので、人々はやむなく、攻め入ってきた人間と戦い、村を取り戻すことにした。
 穏やかに暮らしていた人たちは、武器の作り方を知らず、石や木の枝で戦ったが、勝ち目はなかった。
 そして、戦った人たちがみな倒れた時、神の声が聞こえ、海がせりあがり、海辺の村をすべて飲み込んでしまった。
 結局、戦いをしていたものはだれもみな残らず海の流されてしまい、残ったのはたった一人の子供だけだった。

 山と磯しかなくなってしまった島に一人残されたその子は、なすすべもなく三日三晩泣き続けた。
 そして泣く力も、流す涙も果てしまい、最後には真っ赤な夕空を見ながら、昔見た穏やかな砂浜の海の水と同じ色の涙を流して、西の磯から身を投げた。
 その涙は、日の沈む遠くの深い青い色の海まで流れ着いた。
 それ以来、その子の悲しみがはれない日は、夕暮れの空は赤く染まり、悲しみを忘れられた日は、夕日が涙の色を映して緑色に見えた。
 そしていつか悲しみが消えた日には、太陽は海の青と同じ色に輝きながら沈んでゆくが、未だにその日は訪れていない、と言われている。